絵筆に隠された物理
人間が作った物の多くは、単純な比率の規則に従っている。論文は、釘、タービンの羽根、吊り橋のケーブル、翼を例に挙げている。生物も同様で、代謝率から、幼生からシロナガスクジラに至る動物の泳ぐ速さまでがそうだ。ところが絵筆は、人類最古の道具の一つでありながら、この観点から調べられたことがなかった。それでも誰もが「筆」を思い浮かべることができる。紡錘形で、先が細く、ひと目でなじみを感じる比率をもつ道具だ。
固体物理研究所(パリ=サクレー大学、CNRS)のラファエル・トーブ(Raphaëlle Taub)、クリストフ・プラール(Christophe Poulard)、フレデリック・レスタニョ(Frédéric Restagno)は、ジェローム・クラスー(Jérôme Crassous、レンヌおよびESPCIパリ)、トマ・サレズ(Thomas Salez、ボルドーおよびエコール・ポリテクニーク)とともに、そのなじみ深い形が物理的な法則を隠しているのではないかと問うた。
実験台に並ぶ200本の筆
チームは約200本の市販の筆を測定した。美術用、化粧用、ネイルアート用、建築用の筆で、毛は合成、天然、混合とさまざま、メーカーも多岐にわたる。口金の直径は0.4ミリメートルから40ミリメートルまで、2桁にわたる。それぞれについて、毛の長さLと口金部分の直径Dを記録した。
結果は明快なべき乗則L ∼ D^βとなり、その指数は筆の用途にかかわらず、穂先の形だけで決まっていた。
- 丸い穂先:β ≈ 0.62
- 円錐形の穂先:β ≈ 0.54
- 平らな穂先:β ≈ 0.90
つまり、大きな筆は小さな筆を単に拡大したものではない。その比率は大きさとともに変わり、その変わり方は穂先によって決まる。
大きさにかかわらず同じ押し返し
次に研究者たちは、乾いた筆を引張試験機でアルミ板の上のコピー用紙に押し当て、毛が曲がるときの力を記録した。曲線は3つの段階を示す。繊維がまず弾性的に曲がり、次に摩擦を伴いながら滑って平坦な部分(プラトー)をつくり、最後に筆が完全につぶれて積み重なる。
最初の弾性段階での硬さは、押し込むときに約203ニュートン毎メートル、戻すときに27ニュートン毎メートルだった。ばらつきは大きいものの、筆の大きさにははっきりと依存しなかった。対照実験は印象的だ。チームが1本の筆の毛を少しずつ短く切っていくと、その硬さは大きく変わったのだ。つまり、メーカーが選んだ長さと幅の組み合わせこそが、硬さを一定に保っているのである。
なぜ穂先が重要なのか
単純な接触モデルで指数を説明できる。筆が沈み込むにつれて何本の毛が紙に触れるかを、穂先が決める。平らな穂先は一度に多くの繊維を接触させ、丸い穂先は接触する範囲を徐々に広げ、円錐形の穂先は長くて支えの弱い繊維を接触させる。穂先を指数α(円錐なら1、丸形なら2、平形なら無限大)で表すと、全体の力が筆の大きさに依存しなくなるのは
β = α / (α + 1)
のときだけである。これは1/2、2/3、1を予測し、測定値の0.54、0.62、0.90に近い。
ストロークにとっての意味
水で薄めたガッシュをつけても、筆の硬さは変わらなかった。絵の具は小さなスティックスリップ(引っかかっては滑る)の跳びを滑らかにしただけだった。43度で押し当てた丸筆では、絵の具の跡の面積は筆を押し込んだ深さに比例して大きくなった。筆の種類にはよらない。力は硬さと圧縮量の積であり、硬さはほとんど変わらないので、画家も絵を描くロボットも、手にした丸筆がどれであっても力だけで跡の大きさを制御できる。
著者らはこれを、明示的な設計規則によってではなく、使い手によって「ダーウィン的な仕方で」歴史を通じて形づくられてきた道具だと解釈している。今のところ発見は丸筆に関するものだが、同じように測定、力学、最小限のモデル化を組み合わせる手法を、化粧筆や工業用の塗装具にも応用できるだろうと彼らは提案している。
